【文豪の湯宿】与謝野晶子・鉄幹が「旅かせぎ」に訪れた宿 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

【文豪の湯宿】与謝野晶子・鉄幹が「旅かせぎ」に訪れた宿

このエントリーをはてなブックマークに追加
週刊朝日#旅行

芹川沿いのテラス席から火のついた煙草の吸い殻を投げ捨てた晶子の姿を多くの人が記憶している

芹川沿いのテラス席から火のついた煙草の吸い殻を投げ捨てた晶子の姿を多くの人が記憶している

鉄幹の残した色紙「芹川の湯の宿に来て灯のもとに秋をおぶゆる山の夕立」

鉄幹の残した色紙「芹川の湯の宿に来て灯のもとに秋をおぶゆる山の夕立」

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる連載「文豪の湯宿」。今回は与謝野晶子・鉄幹の「大丸旅館」(大分県・長湯温泉)だ。

【写真】鉄幹の残した色紙

*  *  *
 生涯で172回の旅をして、100カ所を超える温泉を訪れた与謝野晶子。子を育てるため、短歌の同人誌を作るため、晶子は鉄幹とともに各地で講演・揮毫して資金調達する必要があったのだ。夫妻はこれを「旅かせぎ」と呼んでいた。

 夫妻が末娘・藤子を伴い、炭酸泉で有名な大分県・長湯温泉を訪れたのは昭和7年8月。大正6年創業の大丸旅館に宿泊し、地元の有力者たちと懇親・作歌指導の場を設けている。会食の席ではビールやシャンパン、海・山の幸が振る舞われたが、晶子は脚気の予防と言いながら、地元で採れたトマトをひたすら食したという。宴は午前3時まで続いた。

〈芹川の夜の流れより上りきて蛾の坐りたる湯宿の卓〉(晶子)

 この晩、地元の文化人が捕まえたきれいな羽模様の蛾を晶子に見せた際に詠んだ歌だ。晶子は翌朝、愛娘に「蛾を捕まえたから、昆虫の標本にしなさい」と命じている。

 夫妻は朝食を済ませ、30枚近い色紙や短冊に次々と揮毫し、朝9時に車で次の温泉に向かった。大丸旅館にも与謝野夫妻が宿泊時にしたためた歌が残されている。(文/本誌・鈴木裕也)

■大丸旅館(だいまるりょかん)
大分県竹田市直入町長湯7992-1

週刊朝日  2018年4月20日号


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

続きを読む

関連記事関連記事

このエントリーをはてなブックマークに追加