垣添:人生のメリハリをつけるうえでも、すごく大きいですよね。

石:ええ。最近はもう一つ、囲碁合宿ですね。会津や湯河原などの囲碁を完備している旅館やホテルに行くんです。のんびり温泉に入って、囲碁を打って。書くのも趣味ですから、闘病記を本にしたり、新聞にコラムを書いたりもしています。ウォーキングも水中ウォークもやっています。やっぱり、趣味が、がんと闘える一つの武器でしょうね。

■人生の視野が広がりました

垣添:落ち込んでもおかしくないのに!

石:遠くのリンパに転移しているからステージ4Bと宣告されたけれど、がん本体は縮まっている。だから、がんが悪さしなければね、気持ちのうえではステージ1と変わらないんです。

垣添:文字どおり、がんと共存しておられますよね。

石:共存の定義が難しい。どういう状態が共存ですかねえ。やっぱり、昔の古傷で腰や膝が痛くなると、骨転移が疑われるんです。腫瘍マーカーが上がれば気になります。がんを抱えているとね、そりゃさまざまな不安はあります。でも、腹をくくっている感じです。

垣添:ご自分の病状や検査結果を、ものすごく正確に把握しておられますね。

石:経済学者ですから、データを集めて分析するのが好きなんですよ。伴先生にどんどん検査結果を出してもらうんです。データの裏付けがあるから、自分のがんを冷静に分析してみようかなという気になったのです。いわば人体実験の記録ですね(笑)。僕の本(『末期がんでも元気に生きる』ブックマン社)を読んでくれた仲間がね、「ここまで情報を提供してくれるのはありがたい」と。

垣添:私の知り合いにも進行したすい臓がんの方がおられて、この本を送ってあげたら喜ばれましたよ。がんになったことで気がつかれたことはありますか。

石:人生の視野が広がりました。がんになったから経験できたことがいっぱいある。病院の先生とのつきあい、がんの仲間同士の情報交換……。社会的な経験を新たに深めたと、女房と話し合っています。僕は好奇心が強いから、今の医療制度のいろいろな問題をわが身に置き換えてみたりね。

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