日本で最難関といわれる東大医学部の受験生は、もはや知識や思考力が似たり寄ったりのレベルになっているので、そこに加えて「得意分野がでるかどうか」の運が必要ともいわれます。けれど、私からみたら天才というより努力の人である友人は、東大農学部を卒業した後、二浪して東大医学部に合格しました。たとえ運が加わったとしても、何度か転んでも起きる勇気があれば、入れる学部だと思います。

 農学部の子は6年、七浪した子は7年、現役生より上になります。でも、大学に入ってしまえば、浪人生も現役生もあまり分かりません。留年する人もいれば、留学する人もいます。大学で卒業するか、修士、博士までいくかで社会に出る年齢も変わります。特に美大なんかは、入試では技術的に浪人生が有利になるので、多浪で入るのが当たり前、現役生の方が少ない大学もあると聞きます。30代、40代になるにつれて、どんどん年齢の差なんて気にならなくなってきます。「現役」「1年」なんて短い数字にこだわるのは高校生くらいまでです。そのこだわる時期に大学受験があるから少しややこしくなるわけですが、大学や学部は、自分のその後何十年という人生に大きく関わってくる可能性があります。医者なら、大学により医局が異なります。就職でも、表には出さずとも裏で「○○大以上」と決めている会社はあります。だとしたら、何度か失敗しても、再度チャレンジして自分の希望するところに行った方が有益でしょう。

 失敗に負けずに挑戦する精神をつくるために、親は子どもの「才能」ではなく、「できたこと」を褒めるとよい、という研究結果があります。勉強せずに100点がとれたとか、生まれつき絵が上手とか、そういう「生まれもったもの」を褒めるのはおススメできません。子どもは、無意識に親の期待に応えようとするので「もし次100点じゃなかったら失望されてしまう」「次に描いた絵が下手だとガッカリさせてしまう」と思い、挑戦すること自体を避けるようになってしまいます。挑戦しなければ、当然失敗もないからです。

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親の自己満足で言いがちなアドバイス