春の大会の余韻に浸っている場合ではない(右が智弁和歌山・林、左は日本航空石川・上田)(c)朝日新聞社
春の大会の余韻に浸っている場合ではない(右が智弁和歌山・林、左は日本航空石川・上田)(c)朝日新聞社

 第90回選抜高校野球は大方の予想通り、豊富な戦力を誇る大阪桐蔭の連覇で幕を閉じた。大会を通じて両チームが点を取り合う派手な打撃戦が多かった。かつては“選抜は投手力”と言われたものだが、どう見ても“打高投低”だった。

「金属バットとバッティングマシンの性能が向上して効果的な打ち込みができる打者のほうが全体的にレベルアップしています。一方で、投手のレベル低下の背景には競技人口減少の影響もあります。野球はお金がかかるし、色々な技術が求められるので敬遠されると言われていますが、振興に力を入れていかないと日本の野球のレベルがどんどん下がると思うんです」

 こう懸念するのはMLB球団のスカウト。今大会で気になった選手を聞くと「これは、という選手がいない大会でした」という。

 派手な試合が多かった大会の印象とは裏腹で、NPB球団のスカウトに聞いても同様のニュアンスである。前出MLB球団のスカウトは、不出場校の2選手の名を挙げる。

「まず兵庫・報徳学園のショート小園海斗。走攻守すべてにおいて大阪桐蔭の根尾昂以上の素材です。それと、埼玉栄の投手、米倉貫太。柔らかい、しなるような腕の振りが特徴で、DeNAの京山将弥に似ていますが、スケールは京山以上です」

 大会前、二刀流はやりを反映して根尾と共に千葉・中央学院の4番でエースの大谷拓海が騒がれたが、「根尾も大谷もプロでやるなら野手。大谷は大学か社会人を経験してからのほうがいい」(同前)。

 2年連続胴上げ投手となった根尾は二刀流としてスポーツメディアで大騒ぎされているのに、投手としての評価が意外と低い。元スカウトに聞くと、

「名門校、特に連覇のかかった大阪桐蔭のような立場の監督は冒険できません。決勝戦ともなれば、実績を重視した起用になるのが自然です。だけどスカウトから見ると、選手の評価、将来の可能性は別の話。根尾はショートとして評価されている、ということです」

 大会中気になった選手を聞いてみると、21世紀枠出場の秋田・由利工の佐藤亜蓮、智弁和歌山の林晃汰、日本航空石川の上田優弥の名前が挙がった。

「特に佐藤。球離れが良い、投手らしい投手です」

 早くも100回目を迎える夏の甲子園に視線は移っている。(黒田朔)

週刊朝日 2018年4月20日号