新制度で居住権が認められれば、所有権は長男に譲って住み続けられる。自宅の評価額は3千万円だとしても、居住権の金額は1千万円といった少ない額になるため、その分現金を多く相続できる。老後の生活費を確保できるため、不安は減りそうだ。

 つまり遺産に占める不動産の評価額が大きいのに預貯金が少なく、配偶者の手持ちの現金も少ない場合、所有権ではなく居住権を選んだほうがいいケースがある。

 ただし、居住権は必ずしもいいことばかりではない。相続支援業「夢相続」の曽根恵子代表はこう指摘する。

「多くの場合、残された配偶者には住み替えを勧めることになります」

 自宅は配偶者が一人で住むには広すぎるかもしれず、掃除や管理も大変だ。年を取って体が動かなくなってきた時に、「やっぱり売って、もっと手狭なところに移ろう」と思っても、居住権だけで所有権を持っていなければ自由に移ることもできない。どのくらい長生きするかなど、先々のことをよく考えて、居住権と所有権のどちらを選ぶのか家族と話して決めておくべきだ。

「住み続けてきた家に思い出や愛着があるのはわかります。でも、管理の行き届いた高齢者向けの共同住宅など、より快適に住むことができる選択肢があることも踏まえておくべきです」(曽根氏)

(本誌取材班)

週刊朝日 2018年4月20日号より抜粋