北朝鮮の今回の一連の外交でもう一つ注目されたのが、国際オリンピック委員会のバッハ会長の訪朝だ。

 3月29~31日に平壌を訪れ、正恩氏と会談。大胆にもバッハ会長に「2020年東京オリンピックと22年の北京オリンピックに必ず参加する」と伝えた。

 そうすると、日本でも話題になった美女応援団が来日する可能性もあるかもしれない。スポーツライターの慎武宏氏は、02年の韓国・釜山でのアジア大会や、今回のオリンピックで彼女たちを目撃した。

「全員がそろって喜んだり、涙したり、統率がとれているなと思いました。無邪気な感じもしました。02年には20代前半から中盤の方が多かった印象ですが、今回は20代後半から30代前半が多く見えました」

 ただ、東京オリンピックでの美女応援団来日の可能性は低いという。

「韓国には同じ民族だからということで、北朝鮮が歩み寄りで送った。そもそも日朝は国交がない状態で、美女応援団となると民間人になります。果たして入国できるか。もう一つは、北朝鮮からすると、彼女たちが来日して滞在することで、例えば思想汚染などのリスクも抱えることになる。そして、応援については日本にいる在日朝鮮人の方々が多く応援すると思います」(慎氏)

 硬軟使い分ける金正恩氏の巧みな外交術は、どのように練られているのだろうか。実は金正恩氏は自分の名前を検索する“エゴサーチ”を繰り返し、自身の言動が世界中でどう報じられているか、熱心に研究している節があるという。前出の五味氏はこう分析する。

「父・金正日は普段から衛星放送を使ってCNNやNHKを見ていて、日本の雑誌、韓国の新聞、雑誌も見ていると言われていました。その父から学んで、自分がどう放送されているか、どう見られているか、世界の情報を耳に入れているはず。噂の域ですが、韓国の新聞で、彼がインターネットで関連キーワードや自分の名前を検索して、イメージをリサーチしていると報じられていました」

 3代目の手腕は案外、要注意かもしれない。(本誌・大塚淳史)

週刊朝日 2018年4月20日号