ほほえみ外交で一気に状況を打開している北朝鮮。一方、日本は、特に米朝首脳会談は安倍首相に動きが米国から知らされず、決定後に伝えられ、とても同盟関係を結んでいるとは思えない扱いを受けた。

 なぜ日本はここまで置いてきぼりをくらったのだろうか。国際ジャーナリストの春名幹男氏は、米韓の関係を見誤ったと指摘する。

「韓国が事実上の米朝首脳会談の仲介役だが、安倍さんは米韓関係が悪いと思い込み、この動きを全く読めなかった。おまけに従軍慰安婦の問題も文在寅大統領から持ち出され、日韓関係が相当悪くなってしまった。文氏は北朝鮮への人道支援で米国から批判を受けてはいた。しかし与正氏から南北首脳会談を提案されたときも直ちに同意せず、まず米朝の関係改善が先だと返答。他方、トランプ氏には頻繁に電話、文氏への心証はかなり良くなっていた」

 春名氏は安倍首相が平昌五輪で絶好の機会も逃したと指摘する。

「拉致問題にしても、文氏が与正氏と会談したように、安倍さんにも会える機会はあったはず。その場で拉致問題を出すことも可能だった。でも、やらなかったのか、やれなかったのか。オリンピック開会式ではペンス副大統領の横に座って、完全に対米従属です。南北合同選手団が入場したときも拍手もしなかった。韓国民からすれば気分がいいものではなかったでしょう。北朝鮮の選手がいたとしても、半分以上は韓国の選手団。やはりそこのところはエールを送るべきで、外交的な儀礼だった。安倍さんはそこらへんの計算を間違ったかもしれない」

 金正恩氏が米国の懐へ飛び込めたのは、トランプ氏の性格も影響したかもしれない。

「親書で非核化を明確にしていたからだと思いますが、すぐオッケーしてしまったのは、トランプ外交の失敗です。最初の段階では一度はつっぱねて条件を出さないといけなかったのに、しなかった。オバマ氏(前大統領)ならちょっと待てよとなります。検証、査察をきっちりしないといけない。ここら辺のいい加減さが、トランプ氏の弱いところであり強いところ」(春名氏)

 さらにトランプ氏を巡る状況が厳しさを増していることも背景にあるとみる。

「今年は中間選挙の年。トランプ氏がロシア疑惑で、弾劾という動きになってくる可能性もある。下院は過半数を民主党に握られると弾劾訴追が決まってしまい法案も予算も通らなくなる。メキシコ国境の壁の予算も通らなくなる。北朝鮮で支持率を上げたいと思っているでしょう」(同)

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