店内にはテーブル席はない。簡易的に腰を下ろせる場所はあるが、椅子はない。基本的には、長いカウンターで立って、コーヒーとコッペパンを楽しむスタイル。

 店構えは、丸太と石づくりの「山小屋風」。壁の4Kモニターには、奇麗な山の景色が映し出されている。チェックシャツの店員さんの格好も、山小屋仕様ということか。よく見れば、おなじみのコメダのマークの人物、これもチェックシャツにコッペパンを手にしている。

 コーヒーを一口飲み、小倉マーガリンのやわらかコッペをかじる。パンのふんわりとした食感と、あんことマーガリンの風味が、シャッキリとしたコーヒーによく合う。

 しかし、せっかくの「コメダ」だと思うと、もっと“コメダ感”が欲しくなる。メニューをもう一度見てみると、「ソフトクリーム」の文字が。「シロノワール」や「クリームソーダ」など、コメダの人気メニューにはおいしいソフトクリームが欠かせないものも多い。「これだ!」とオーダー。一口食べて、やっぱり「これだ!」、これだ、コメダ。

 くつろぎの椅子席もスポーツ新聞も、コーヒーを頼むと毎回提供してくれる「豆」もないけれど、コメダに来ている感が、一気に高まった気もする。

 とはいえ、通常のコメダ珈琲店では、1時間以上くつろぐことも少なくないが、今回は、粘りに粘って20分。10分以内にさっと出るお客さんが多い印象だ。短時間でくつろいで、飲食を楽しんだらさっと出る。そのほうが、粋だろう。

 コメダ広報によると、このコメダスタンドはオープン以来客足も好調とのこと。

「オフィスでお仕事をされていらっしゃる方から、お買い物にいらっしゃたファミリーなど、幅広い層にご来店いただいております」

 コメダが掲げる「くつろぎへのこだわり」とスタンド店との両立について尋ねてみると、

「コメダ珈琲店の核となる『くつろぐ、いちばんいいところ』のDNAを受け継いだ、新たな空間を目指しました」

 と回答。

「コメダスタンドは、『コメダのコーヒーとコッペパンがセルフサービス式で楽しめる』ということが、まず第一の特徴です。立ち席のみの設計ながらも、やすらげる空間を演出しました。仕事の合間やショッピングの途中に、“さっ”と立ち寄って、“ほっ”と一息つくのにぴったりな場所になれば」

 とのこと。今後のコメダスタンドの出店については、現時点では未定だそう。

 気軽に味わえるコメダ新スタイルの戦略に注目していきたい。(本誌・太田サトル)

※週刊朝日 オンライン限定記事