土俵外の騒動はもう結構です (c)朝日新聞社
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全勝で序ノ口優勝を決めた納谷。次の元号のスタートのころには、どの地位にいるのだろうか (c)朝日新聞社
全勝で序ノ口優勝を決めた納谷。次の元号のスタートのころには、どの地位にいるのだろうか (c)朝日新聞社

 「自分に与えられた職責を果たし、弟子の育成と大相撲の発展のためにゼロからスタートして参ります」

【写真】次世代を担う力士となる? 全勝で序ノ口優勝を決めた納谷

 3月29日、日本相撲協会は貴乃花親方に2階級降格処分、十両貴公俊(20)に5月場所の出場停止処分を下し、2人は首を垂れた。日馬富士の暴行事件に端を発した“貴の乱”は、ようやく幕が下りた。

 そこで土俵に目を移せば、次代を担う可能性を秘めた若い芽が出てきた。筆頭が、序ノ口デビューした3月場所で7戦全勝優勝を飾った納谷(18、大嶽部屋)だ。史上2位の優勝32回を誇り、“巨人、大鵬、卵焼き”と並び称された昭和の大横綱大鵬の孫にして、父は元関脇の貴闘力。高校相撲界の名門、埼玉栄で活躍し、キャプテンを務めた昨年は全国高校選抜大会と国体少年の部で個人2冠を達成、国体では団体も制した逸材だ。

「埼玉栄の山田(道紀)監督は『しっかりしている。いいキャプテンだった』と評価してましたからね。おじいさんが有名な大横綱で、ともすれば勘違いしそうな環境にありながら、賭博問題で角界から永久追放されたお父さんとは違い、真面目です(笑)。高校時代に家を出て、豪栄道などが輩出し、プロを目指す者が集う埼玉栄という厳しい環境で合宿生活を送り、相撲の基礎だけでなく礼儀も学んだことが良かったんでしょう」(相撲担当記者)

 肝心の力士としての可能性を聞くと、ベテランの相撲担当記者が、こんな言い方をした。

「デビュー場所を全勝優勝したわけですが、いつ負けるか、です。負けたとき、どう立て直すか。心の強さを見てみたい。高校相撲でトップレベルだった彼を脅かす存在は、今の位置ではそういませんから」

 納谷のライバルになりそうなのは、埼玉栄時代の同級生で一場所早くプロデビューした塚原(春日野)と、琴手計(ことてばかり・佐渡ケ嶽)。

「高校時代、納谷より強いと言われていた塚原は、1月場所で序ノ口優勝、3月場所で序二段優勝と、納谷の一足先を行ってます。それと、朝青龍の甥の豊昇龍も負けん気が強くておもしろい。納谷に負けても『体重の差だね。10キロ増えれば勝てる』と言っていましたから(笑)」(同前)

 楽しみな納谷世代。若貴で盛り上がった時代も、曙や武蔵丸というライバルがいたからだ。

 相撲はやっぱり土俵に注目が集まってほしい。(黒田朔)

週刊朝日 2018年4月13日号