■サン・ミシェル大通り(ジャン・フランソワ・ラファエリ 1890年代)


奥に見えるのはパンテオンと呼ばれるフランスの偉人の霊廟で、舞台となっている場所は、パリのいわゆる文教地区です。馬車が通り、小粋なカップルがいて、ベル・エポック(良き時代)といわれた19世紀末の雰囲気が伝わってきます。私たちがイメージする憧れのパリがこの絵にあるようです

■草上の昼食(クロード・モネ 1866年)
パリの南にあるフォンテーヌブローの森にピクニックにやってきた若者たち。当時の最新ファッションに身を包み、優雅なひとときを楽しんでいます。モネの60年代の代表作で、モデルの女性は恋人のカミーユ、男性は友人のバジールと思われます

■白い睡蓮(クロード・モネ 1899年)
モネが1883年ころから移り住んだパリ郊外のジヴェルニーにつくりあげた日本風の庭園を描いたもので、太鼓橋がかかっています。モネは自然と調和している日本に共感し、ユートピアとしての日本をこの庭園で再現しようとしたようです

■ブーローニュの森(アンリ・マティス 1902年)
パリのすぐ西、凱旋門を出てすぐのところにある整備された庭園「ブーローニュの森」が描かれています。競馬場や、さまざまな動物がいる馴化園もあります。近くにある高級住宅地の人々はこの森で散歩を楽しんでいました。風景画家ではないマティスの珍しい作品です

■サント・ヴィクトワール山、レ・ローヴからの眺め(ポール・セザンヌ 1905-06年)
セザンヌの生まれ故郷、フランス南部のエクス・アン・プロヴァンスにある堂々とした姿のサント・ヴィクトワール山です。セザンヌは家の近くから見えたこの山の絵を何点も残しました。風景を写実的に描くのではなく、自身の“感覚を実現”するとして、独自の視点をカンバスで表現しています。視覚の哲学ともいえる画家の世界と向き合ってください

■マタモエ、孔雀のいる風景(ポール・ゴーギャン 1892年)
タヒチに渡ったゴーギャンが、プリミティブな世界に刺激を受けて描いたエキゾチックな雰囲気がある作品です。原色の色面を組み合わせて構成された、ゴーギャンの典型的な風景画です

■馬を襲うジャガー(アンリ・ルソー 1910年)
ルソーは南国には行かずに、植物園に行ったり、熱帯地域に行った人の話を聞いたりして想像で描きました。斬新で幻想的な世界は、今でいう“ヘタウマ”ですが、素晴らしい才能だといえます

(解説/三浦篤[東京大学教授・西洋美術史]、構成/本誌・鮎川哲也)

プーシキン美術館展
2018年4月14日~7月8日 東京都美術館(東京)
2018年7月21日~10月14日 国立国際美術館(大阪)

週刊朝日 2018年4月6日号