白内障手術はにごった水晶体を取り除き、眼内レンズを入れる治療だ。にごりのないレンズで光からの信号が十分に脳に届くことで、体内時計が正常に働くようになる。

「白内障の患者は加齢によってメラトニンの分泌がもともと低いため、手術による変化は大きいのです。昼間にしっかりと光が届いているほうが、夜間にメラトニンがたくさん出てよく眠れます。反対に夜間にブルーライトをカットすることも重要です」(同)

 ちなみに、パソコンやスマートフォンからのブルーライトを遮断するブルーライトカット眼鏡は、睡眠に影響しないのだろうか。

「ブルーライトカット眼鏡は疲れ目に効果があると実証されています。ただ、一部の人は昼間にかけるとメラトニンが出て『夜だ』と脳が錯覚し、体調を崩す可能性があります。日中使うときは、低めのカット率で試してから始めることをおすすめします」(同)

 白内障の眼内レンズにも、透明なものと、ブルーライトの透過性を抑えた黄色い着色タイプのものがある。だが、その差は睡眠に影響するほどはない。レンズの種類よりも、にごった水晶体を取り除くということのほうが、睡眠への影響が大きいからだ。

 白内障だけでなく、緑内障や加齢黄斑変性も睡眠の質を下げる可能性がある。綾木医師はこう話す。

「これらの病気の人は気持ちが落ち込みやすく、うつ状態が睡眠に影響します。緑内障では網膜の中のブルーライトを受容する細胞が死んでしまうからです。重度の緑内障患者は睡眠時の脳波が悪化しているというデータがあります」

 体内時計の乱れは、不眠だけでなく肥満や高血圧、うつ状態などさまざまな不調につながる。からだのリズムを整えるためにも、目の病気は早めに治療したい。(医療健康編集部・井艸恵美)

週刊朝日 2018年4月6日号