物忘れのタイプは、どの行程が障害を起こすかで決まる。「今朝、ごはんを食べたことを忘れる」アルツハイマー型認知症の物忘れは、「記銘」作業の障害。ど忘れや脳過労による物忘れは、「検索・取り出し」機能が落ちているだけで、あとは正常。「スマホ認知症」は後者のタイプだ。

 食事の間もベッドやトイレでもスマホを手放さない生活では、脳の整理、処理が追いつかない。脳の図書館は、あっという間にゴミ屋敷へ早変わり。冒頭の男性のように、物忘れやミスを繰り返す。そして、うつにつながりやすいという。

「スマホを使うほど、学力が下がります」「脳にもダメージが‼」

 2017年2月、日本医師会と日本小児科医会が過度のスマホの使用を警告するポスターを作った。全国の小中学校で、学力と学習状況を調べた結果、スマホなどの利用時間が長いほど平均正答率が低い傾向があった、と解説したのだ。衝撃的な内容に、ネット上でも議論が起こった。

 さらに東北大学加齢医学研究所と仙台市は7年間にわたって、7万人の小中学生に対して、スマホやLINEの使用と学力の関係を調べている。調査に加わった横田晋務・九州大学准教授は、その結果に驚いた。

「家庭で1日2時間以上勉強して1日4時間以上スマホを使うと、成績は、勉強はほぼしないがスマホを使わない子どもと同じか、それ以下でした」

 LINEなどに代表される通信アプリでは、さらに顕著な結果が出た。

 海外でも、メッセンジャーアプリを使用する大学生の成績が著しく低いことや、同アプリを使用しながら読書をすると正確性が下がる、とする論文がある。

 だが、スマホの使用と脳機能の変化について、因果関係を証明する科学的なデータはまだ存在しない。

「あくまでスマホを含むメディア機器の使用と行動の関係を分析した結果です。家庭環境や本人の性格など複数ある素因のひとつがスマホである、ということでしょう」(横田准教授)

次のページ
高齢者の場合、気づかれない危険性も