じいじ・ばあばが孫を子守する時代、乳児にスマホを見せるのはよろしくないそうだ(写真はイメージです)(c)朝日新聞社
じいじ・ばあばが孫を子守する時代、乳児にスマホを見せるのはよろしくないそうだ(写真はイメージです)(c)朝日新聞社
「スマホ認知症」チェックリスト
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ゲーム依存の子どもの脳の画像
ゲーム依存の子どもの脳の画像

 トイレやベッドでも手放せないスマートフォン。ネットニュースに浸り、簡単検索にバーチャル旅行と、楽しくてしかたない。いや待てよ……。定年後、画面に向かう時間が増えたし、外出もおっくうになった。食欲もない。依存の度が過ぎた状態に”スマホ認知症”と警鐘を鳴らす医師もいる。現状と対策を探る。

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「外出もしたくない。自分で物を考えることもおっくうなんです」

 認知症などの脳神経疾患を専門とする「おくむらメモリークリニック」(岐阜県)の門をたたいた67歳の男性はそうつぶやいた。

 最近、漢字が書けず、物忘れも激しい。日常生活に支障をきたすことも増え、認知症を心配した家族が受診を勧めたのだ。奥村歩院長は、MRIで脳の状態を見た。しかし、記憶をつかさどる脳の海馬部分の萎縮は見られない。

「スマートフォンでインターネットを過度に使用し続けたことによって、脳が疲労を起こしていたのです。いわゆる、『スマホ認知症』です」(奥村院長)

 男性はこれまで典型的なアナログ人間だった。「認知症の予防に」と、面白そうな新聞記事を切り抜いてはスクラップブックに貼り、感想を記した。だがスマホを手にするとびっくりした。新聞よりネットのほうが情報量も豊富だと感じた。書店で品切れの本も、クリックすれば、翌日には自宅に届く。お金のかかる旅行でも、ネット上だったら一瞬にしてどんな秘境にも出かけられる。自宅にこもってネット漬けになるのに時間はかからなかった。食欲もない。しばらくすると、「うつ症状」に陥ったという。

「ネットやスマホ依存に陥る高齢の患者は、知的職業に就いていた方がほとんどです。知性の高い人間ほど、情報に対してハングリーだからです。北朝鮮問題や政治問題など世間を騒がせるニュースがあると『把握せねば』と強迫観念に駆られてしまうのです」(同)

 そもそも、人が物を記憶するためには、脳内で三つの作業が必要だ。一つ目が見聞きしたことや経験をインプットして覚える「記銘」。二つ目が覚えた情報を仕分けして脳の図書館へ保管する「保持」。三つ目が図書館から必要なものを探す「検索・取り出し」である。

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スマホ認知症とアルツハイマーの違い