昨年は、ミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」で、オーディションによってバレエ教師の役を獲得した。

「落ちるかもしれない、という不安はありましたが、何かに挑戦することには常に“学び”があるので、チャンスを与えられることが、有り難いなと思います。今年、世界的に有名な踊り子マタ・ハリを演じたときは、自分の中のお芝居に対する思いが、ガラリと変わりました。それまでは、宝塚で学んだ“男役”のセオリーではないところで、“女役”を演じることに必死だったのですが、マタ・ハリという役を通して、一人の人間を演じるときには、女性も男性も関係ないと痛感したんです」

 退団後の活動を通して、あらためて、「心情を表現するダンスが好きだなぁ」と思ったりもした。

「内面に激しい感情が溢れて、それが結果として踊りになった、という表現が、『マタ・ハリ』の中にあったんです。踊りながら、お客さまの呼吸ともセッションしているような感覚があって、“舞台で生きていきたい”という思いを強くしました」

(取材・文/菊地陽子)

週刊朝日  2018年3月30日号