権利が確定すれば、すぐに売っても優待を受けられる。多くの個人投資家が優待狙いで「駆け込み」で買うため、基準日が近づくと株価が上昇する銘柄も目立つ。割高な株価で買い、権利確定後にすぐに売ると損をする恐れもある。

「半年後の優待をもらうつもりで投資する心の余裕があるとよいでしょう。長期間保有すると優待がさらにお得になる銘柄も増えています」(清水氏)

 大和IRによると株式の保有期間を条件とした優待制度を実施する企業は315社で、優待制度がある企業の約2割に達している。

 財産ネットの藤本誠之・企業調査部長はこうアドバイスする。

「せっかく投資しても、損をしては元も子もありません。優待だけに注目するのではなく、成長が期待できる会社を選ぶべきです」

 藤本氏が注目するのはニッチな分野でトップ級の実績があり、時勢に沿っている会社。具体的にはスポーツイベントの企画・設営のセレスポや、独立系電気設備工事会社のJESCO HDなどだ。

「割高かどうかを示す株価収益率(PER)は日経平均株価でみると12.5倍前後で、アベノミクスが始まってから最低水準です。景気が悪いわけでもないので、全体的に割安感がある今は投資によいタイミングでしょう」(藤本氏)

 大和IRの中村氏によれば、株主優待は日本独特の慣習だという。最近では海外の投資家らを意識し、利益を公平に還元するためなどとして、廃止する企業もある。優待は楽しみを増やす「おまけ」として考え、企業の業績や成長性をじっくり見極める姿勢が必要だ。(投資取材班)

週刊朝日  2018年3月30日号