「安倍首相の不用意な答弁が、すべての始まりです。文書を改ざんすることで、いったい誰にメリットがあるのかが重要です。犯罪には必ず利得者がいます。実際には犯罪を実行した下手人(財務省)だけが罪に問われていますが、利得者は安倍首相です。文書に実名が出てくるのは、鴻池、平沼両氏ら政治家と昭恵夫人だけです。つまり、財務省は政治家と同等の公人として夫人を認識していたのです」

 そして森友学園前理事長の籠池泰典被告は国有地の賃借料の減額交渉などを昭恵夫人付の政府職員・谷査恵子氏に依頼。谷氏が財務省理財局の田村嘉啓・国有財産審理室長へ問い合わせを行った結果、「神風が吹いた」(籠池氏)と言わしめる8億円の値引きへとつながっていったのである。

 党内では、これまで安倍首相の盾になってきた麻生財務相は近く辞任するとの見方が強まっている。

「表向き二階(俊博)さんと菅さんが安倍さんを支える構図だけど、麻生さんの処遇に困っている。予算案及び関連法案の通過の見返りに、麻生さんを辞任させる算段だが、麻生さん自身は『俺がいないと安倍政権は倒れる』と最後まで自分を高く売る考えでゴネている。麻生さんは『安倍夫妻のせいで、何で俺が国会で責められ、辞めなくちゃいけないの』と、腸(はらわた)が煮えくりかえるほど怒っているようです。『俺は森友と関係ねえ』と周囲にぶちまけ、辞める条件として麻生派の鈴木俊一さんを後任の財務相にあて、安倍官邸が決めた消費増税の延期の撤回を迫る考えです。安倍さんも対応に頭を抱えている」(与党幹部)

 実際に安倍首相の後ろ盾だった麻生財務相が辞任すると、政権が一気に瓦解する恐れもあるという。自民党幹部がこう指摘する。

「安倍さんの出身派閥の細田派幹部も『支持率が30%台まで落ちたら、政権はもう持たない』と言いだしている。二階幹事長は自民党への世論の批判をかわすために、総裁選を前倒しするという奇策も考えているようだ。早ければ、ゴールデンウィーク明けになる可能性がある。青木幹雄氏の後ろ盾で額賀派を引き継いだ竹下(亘)総務会長と二階幹事長が手を結ぶとも噂が流れ、着々と安倍包囲網がめぐらされている。水面下で総裁選へ向けた各派閥の多数派工作がすでに始まっています」

(本誌・亀井洋志、浅井秀樹、松岡かすみ、森下香枝/村上新太郎)

週刊朝日  2018年3月30日号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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