北原みのり「オジサンも怖かったんだね」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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北原みのり「オジサンも怖かったんだね」

連載「ニッポン スッポンポンNEO」

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北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

オジサンも怖かったんだね(※写真はイメージ)

オジサンも怖かったんだね(※写真はイメージ)

 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は、「電車内で女性が恐れること」について。

*  *  *
 昼間の地下鉄、空いている車内に突然、男性の怒声が響いた。女性が「殴りましたよね」と優先席に座っている男性に訴えているのが見えた。「殴ってねぇよ!」と叫ぶ男性の声は、今にも飛びかからんばかりの強さだ。それでもほとんどの人は、すぐに視線を戻した。私たちには、これが日常、よくある車内のいざこざだ。ただ、「殴った」というのが気になり近寄っていった。

 若い女性だった。「大丈夫?」と聞くと、「駅員を呼んでください」と口をゆがめた。ドア付近に寄りかかるように立ったら、背後から殴られたと言う。男性は70代だろうか。つけている紙マスクが毛羽立っていて、季節はずれの薄着は、よれよれだった。もしかしたら認知症かとも思いながら「殴ったの?」と聞くと「俺は触っただけ、殴るならきちんと殴る」と吠えた。

 仲裁したかったわけじゃない。ただ女性を一人にしたくなかっただけだけど、その言葉で、火が付いてしまった。「殴るならきちんと殴る」? は?と、カッときた。

 幼い頃から電車で何度も目撃してきた。被害にあったこともある。車内で女が恐れるのは痴漢だけじゃない。暴言吐かれたり、こづかれる怖さもある。「意識過剰なんだよ、ブス」と切れる男や、「化粧臭い」と女性を頭ごなしにしかる男性を見てきた。で、オッサン、今、なんと? 「少なくとも、触ったんだよね。謝りなさい」。私は男性に詰め寄った。そうしているうちに駅に着いたので、ホームの駅員に「車内で殴られたと言う女性がいます」と声をかけると、男性は立ち上がり「電車を止めるなら降りるよ」と言って席を立った。


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