東京都在住の栗田淑子さん(仮名・66歳)は17年3月、イギリス旅行から帰国した翌日、左足のふくらはぎの内側に鈍痛を感じた。整形外科でエックス線検査を受けたが、異常はない。診察した医師は、栗田さんが帰国後間もないことを聞いてロングフライト血栓症をうたがい、旅行医学に詳しい千駄ケ谷インターナショナルクリニックを紹介した。栗田さんを診た同院長の篠塚規医師は次のように話す。

「栗田さんはD-ダイマー検査の値が高かったため、脚の超音波検査とMRIによる血管造影をおこなったところ、血栓が見つかりました」

 すぐにアピキサバンを1週間服用、再度検査をおこなって血栓が縮小していることを確認し、さらに約8週間、再発予防もかねて服用を続けて治療を終了。18年1月のハワイ旅行では予防法をきちんと実践し、再発はしなかったという。

 避難生活で、プライバシーを大切にしたいと、マイカーで寝泊まりする車中泊が増加したことで、静脈血栓塞栓症のリスクについて徐々に知られてきてはいるが、まだ認知度は低いと篠塚医師は警鐘を鳴らす。

「この病気を知る人は増えていますが、正しい予防法を知っている人は少ないのが現状です」(篠塚医師)

 予防には表にあるようなことを実践することが大切だ。このほか、ひざから下の弾性ソックスを使用したり、この病気になったことがある人はアスピリンやDOACを処方してもらい予防的に服用することもすすめられる。

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