ところが、である。

 大会の初戦の相手は浦和学院(以下、浦学)に決まった。出場約160校の中から、よりによって県下一の強豪校を抽選で引き当ててきたのである。何度も甲子園出場の経験を有し、優勝候補の筆頭だ。しかも、地元テレビ埼玉でテレビ中継されるという。果たして喜んでいいのかどうか。ただはっきりしているのは相手に不足はなく、初戦ながらこれ以上ない舞台が整えられたことは確かである。

 石山は浦学のビデオを取り寄せ、戦力を徹底分析し、ピッチャーには攻め方、バッターには狙い球を伝授した。斉藤監督への作戦の指示は、

「九回までテレビに映ればいい。コールドゲームになりそうだったらタイムをかけて、1分1秒でも小鹿野の人たちにテレビ中継を楽しませろ。以上」

 小鹿野高校野球部再生に向けた「プレーボール」のコールがかかった。(次週、後編に続く。文中敬称略)

週刊朝日 2018年3月23日号