ヘアメイク、着付け、そして所作の指導と細部にわたり、写真では見えないところまで忠実に再現していく。こうして壇蜜版「見返り美人図」が誕生した(撮影/門間新弥、ヘア&メイク/カツヒロ、着付け協力/ハクビ京都きもの学院、衣裳協力/松竹衣裳)
ヘアメイク、着付け、そして所作の指導と細部にわたり、写真では見えないところまで忠実に再現していく。こうして壇蜜版「見返り美人図」が誕生した(撮影/門間新弥、ヘア&メイク/カツヒロ、着付け協力/ハクビ京都きもの学院、衣裳協力/松竹衣裳)
(撮影/門間新弥、ヘア&メイク/カツヒロ、着付け協力/ハクビ京都きもの学院、衣裳協力/松竹衣裳)
(撮影/門間新弥、ヘア&メイク/カツヒロ、着付け協力/ハクビ京都きもの学院、衣裳協力/松竹衣裳)
(撮影/門間新弥、ヘア&メイク/カツヒロ、着付け協力/ハクビ京都きもの学院、衣裳協力/松竹衣裳)
(撮影/門間新弥、ヘア&メイク/カツヒロ、着付け協力/ハクビ京都きもの学院、衣裳協力/松竹衣裳)

 切手にもなった、わが国で最も有名な日本画の女性「見返り美人図」。4月13日から東京国立博物館で公開されるのを機に、壇蜜さんが「現代の見返り美人」に扮した。

【写真】メイクする壇蜜の美しい横顔はこちら

「『見返り美人図』はつくられた美とも言えるでしょう。振り返る姿とともに着物の美しさを見せるため、現実の人間には不可能なポーズをとっているのです」とは日本美術史が専門の東京大学教授・佐藤康宏さん。

 そんな状況ではあるが、壇蜜さんは「見返り美人図」になりきろうと無理な姿勢にチャレンジを続けた。撮影後、写真を見ながら、「思った以上に絵に近いですね。肩と首が非現実的にひねられているので、そのポーズをとるのが難しかったです」と出来栄えに満足の様子だった。

「見返り美人図」は江戸前期の絵師・菱川師宣の作品である。当時流行の着物に身を包み、歩みの途中で足を止め、ふと振り返る女性の姿を描いたもので、昭和23年に切手にもなった。

 師宣は、衰退していた生命力のある人物像を木版画で再現し、浮世絵の祖ともいわれている。

「『見返り美人図』は、前の時代に描かれた『風俗図屏風』や『湯女図』のようなタイプの作品を参考にしたとされています。この流れは“振り返る女性”の系譜とも言えますね」と佐藤さん。

 師宣だけでなく、芸術家が過去の作品をリスペクトしたり、影響を受けたりするなど、美術作品の間には“つながり”がある。

 佐藤さんは、そのつながりが見えると、より美術を深く楽しむことができると話す。

 新しい時代の作家は既存の作品をリスペクトし、その要素を真似したり、自分なりに解釈してつくり変えたりして新たな作品を生み出している。

 例えば「見返り美人図」は「湯女図」や「風俗図」のような振り返る女性の姿をモチーフにしていると思われるが、師宣が振り返る人物のポーズだけでなく、着物の美しさも同時に見せようとしている試みがうかがえる。

 また、若冲の作品では、自分の作品の模倣が、そのまま創造になるのはよく見られる現象だ。「仙人掌群鶏図襖」の右端の絵は、自身の初期の作品である「雪梅雄鶏図を模倣しつつ、サボテンという全く別の要素を盛り込み、新たな世界観をつくり出している。

「単純に並べて比較してみると面白いですよね。こうして美術作品が生まれてくる背景や歴史を、ひととき、美術史家になったつもりで考えてみるのもいいんじゃないでしょうか」(佐藤さん)

■重要文化財 四季花鳥図屏風
雪舟等楊筆
室町時代・15世紀 京都国立博物館蔵 展示期間:4月13日~5月6日
本来は上の屏風が右に、下のものが左に配される。中国・明時代の花鳥画を手本として構成された作品。手前から奥へ奥へとものを積み重ねていくことで、重厚感を出しているのが明時代の特徴だ。雪舟は47歳のときに明に渡って、さまざまな画法を学び、その手法を駆使して作品をつくりあげた。「雪舟の作品は明時代の花鳥画の単なるコピーではありません。両端に屈曲する松と梅を配し、重心を左右に置き、真ん中に空間をつくり出す手法はすでに日本の室町時代からありました。雪舟はそれを踏襲しつつ、明時代の手法を取り入れ、自身の中で昇華させ、この作品を描いたと思われます」(佐藤さん)

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