林:女装姿、きれいですね。パッと見たとき、女優さんかなと思っちゃった。お母さま(角替和枝)にちょっと似てらして。

柄本:ほんとですか? ありがとうございます。

林:このおじさん、最後まで懲りないんだなというのが、あの女装で出てましたよ(笑)。

柄本:その懲りなさというか、人間味をどう見せるかということは、監督(冨永昌敬)と話しました。前半部分は比較的人間味も見せつつ、ある種の青春映画みたいに……。

林:貧乏でも、奥さん(前田敦子)と支え合って一緒にイラストを描いたりして。「ゲゲゲの女房」みたいに。

柄本:そうやって頑張るという感じで、後半、髪の毛が短くなってからは、人間味をどんどんなくしていって、「この人、何を考えているのかまったくわからない」というところで終わりにしましょう、という感じだったんです。

林:なるほどね。ストリーキングはどうでした?

柄本:アハハハ、あのシーンは最終日に撮ったんで、お祭り感というか、大団円感がありましたね。真っ裸になって頭からペンキをかぶって奇声を発しながら走ると、やっちゃいけないことをやってる感じがあって、楽しかったです。えれェ寒い日でしたけど。

林:撮り直しなしですか。

柄本:なしです。9カットぐらいあって、カットとカットのあいだは部屋で待ってて、「準備できました」ってなると、走るルートだけ言われてすぐ本番でしたね。時間がたつとペンキが固まっちゃうんで、新鮮なやつをかぶり直して走るみたいな(笑)。

林:このごろの若い俳優さん、やたら体を鍛えてて、美しすぎるじゃないですか。柄本さんはふつうでよかったですよ。腹筋が六つに割れてて「見て、見て」という感じだと、イマドキの感じになっちゃいますから。

柄本:よかったです、ふつうの体で(笑)。この作品はいろんな問題を残したまま終わるんですけど、そこは監督がすごくこだわったところですね。一緒に企んでやっている感じで、楽しい部分でもありました。

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