柄本:へーえ、そうなんですか。

林:秋山さんが「今日、南伸坊という頭がおむすびの形をした奴がくるよ」とスタッフに加わったり、みんなが新宿2丁目でケンカしてたり、アラーキーさん(荒木経惟)が登場して大活躍したり。猥雑なエネルギーに満ちていたあの時代を思い出しましたよ。柄本さん、これでまた賞をいっぱいとりそう。

柄本:アハハハ、ありがとうございます。この時代の雰囲気を知る林さんにそう言ってもらえると、勇気が湧きますね。

林:原作の末井昭さんは、『自殺』というエッセーで講談社エッセイ賞をおとりになったけど、私、その選考委員なんです。

柄本:そうなんですか。この映画の原作も好きですが、『自殺』もおもしろいですよね。

林:この映画によると末井さん、ずいぶんモテたみたいですね。

柄本:実際にお会いすると、色っぽい方だなと思いますね。初対面のときにちょっとコワいくらいじーっと見られたんですが、それが色っぽさに通じるんじゃないかと思いました。このあいだ末井さんにその話をしたら、「僕もいっぱいウソをついてきたから、今の奥さんと出会ってウソつくのやめようと思ったんだ。ウソってほんとに疲れるんだよね」とおっしゃってました。

林:末井さん、きれいな奥さんを連れてませんでした?

柄本:現場に5日ほどいらっしゃってましたけど、ご一緒でした。

林:神蔵美子さん。評論家の坪内祐三さんの奥さんだったんですよ。

柄本:そうなんですよね。(三角関係を描いた)あの写真集、『たまもの』でしたっけ、けっこう赤裸々ですよね。

林:思い出した。講談社エッセイ賞、坪内さんも選考委員なんですよ。昔の妻の旦那が書いたものに、ちゃんと票を入れていた気がする(笑)。それはさておき、この映画のお話があったとき、難しそうな役だなと思われました?

柄本:僕、そういうのよくわからないんですよ。最初に「末井昭さんという方の『素敵なダイナマイトスキャンダル』という自伝が原作で、その末井さんの役です」と言われて、原作を手に取ったんです。そうしたら末井さんが女装している写真が載っていて、俺と顔が似てるなと思ったので、「じゃあ大丈夫かな」と。

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