やっかいなことに、動脈硬化はほとんど自覚症状がないまま静かに進行する。突然、心筋梗塞の発作や大動脈瘤の破裂を起こす。

「水道管と同じで多少劣化して狭くなったとしてもある程度水は流れるので、なかなか異常に気づくことができません。半分まで狭まると、おかしいと気づく。ダメージを受けている臓器の検査値にも異常が出てきます。さらに狭まって4分の1しか流れなくなれば、はっきり病気だとわかります。せめて『半分』のところで対策に取り組んでほしいのですが、4分の1まで放置してしまう人はたくさんいます」(同)

 動脈硬化は10代から始まって単に年をとるだけでも進行し、喫煙、高血圧、肥満、糖尿病、ストレスといった危険因子が加わると、加速してしまう。危険因子を減らす生活が欠かせない。河野医師は留意すべき7カ条を挙げる。

【血管力を高める7カ条】
◆たばこの煙を徹底的に避ける
◆血圧を正常値に保つ
◆塩分をとりすぎない
◆太りすぎも痩せすぎもダメ(BMI22~26が目安)
◆「1回30分以上」の運動を週3回
◆働きすぎない・ストレスを減らす
◆1日に酒量はビールなら中瓶1本、日本酒だと1合、ウイスキーならダブル1杯まで

 受動喫煙を含め、たばこの煙を徹底的に避ける。高血圧に直結する塩分、肥満の人に多い脂質、糖尿病を悪化させる糖質を抑え、栄養バランスの良い食事を心がける。河野医師は言う。

「塩分も脂質も糖質も悪者ではなく、生命活動をするためにある程度は欠かせません。特に糖質はエネルギー源なので、糖尿病であっても必要です。とりすぎが問題なのです」

 健康診断の血液検査では、過去1~2カ月間の血糖値の指標となる「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」が基準値を超えた場合には生活習慣の見直しが必要だ。糖尿病と診断するよりもかなり前の段階で異常値と判定されるため、薬を使わなくても回復できることが多い。基準値と比べ、「悪玉(LDL)コレステロール値が高い」「中性脂肪値が高い」「善玉(HDL)コレステロール値が低い」といった場合にも対策が必要だ。

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