3月2日、三田署から送検されるバイラクタル容疑者 (c)朝日新聞社
3月2日、三田署から送検されるバイラクタル容疑者 (c)朝日新聞社

 兵庫県三田(さんだ)市の女性会社員の近藤早紀さん(27)が行方不明になり、大阪府や京都市でバラバラに切断された遺体が見つかった事件で、米国籍のバイラクタル・エフゲニー・ヴァシリエヴィチ容疑者(26)が死体損壊・遺棄などの疑いで逮捕された。

 バイラクタル容疑者は「Tinder(ティンダー)」というマッチングアプリを使用。位置情報サービスを利用して自分の近くにいる人と通信できるもので、これで被害者と知り合ったとみられている。捜査関係者がこう語る。

「このアプリは登録者が位置情報をオンにすれば近くにいる異性の登録情報、顔写真がわかりチャットもできる。バイラクタル容疑者はこれでさまざまな女性を物色していた。近藤さんとは『ティンダー』で知り合った後、インスタグラムでやりとりしていたようだ。バイラクタル容疑者は近藤さんに対し、そちらに行くぞと何度もメッセージを送った。近藤さんは繰り返し断ったが、位置情報である程度の場所を知られてしまうため、押しかけられると面倒だと、容疑者のいる大阪まで電車で出かけることになった可能性もある。位置情報を悪用した犯行だったとも考えられる」

 バイラクタル容疑者は大阪市東成区の民泊で遺体をバラバラにし、複数回に分けて運び出して遺棄したとみられている。予約していた西成区の民泊ではスーツケースに入った女性の頭部が見つかった。これらの民泊は犯行時、国家戦略特区を活用した民泊制度の認定や、旅館業法の許可を得ていなかったという。いわゆる「ヤミ民泊」である。

 日本への観光客の増加などを背景に急速に普及する民泊だが、現状ではその8割以上が無許可の「ヤミ民泊」だと言われている。民泊の実態を調査するサイト「民泊ポリス」を運営する「オスカー」(東京都渋谷区)の中込元伸CEOはこう語る。

「『ヤミ民泊』の一番の問題点は人の目が行き届かないところ。ホテルならフロントを通らないと部屋まで行けませんが、『ヤミ民泊』では郵便受けに入れた鍵を受け渡すなどして、誰とも会わずにチェックインできてしまう。本人確認もクレジットカード情報のみという場合が多く、他人名義でもわからない。犯罪の舞台となる可能性は通常のホテルより高いと思われます。現に、違法ドラッグの流通経路に民泊が使われているという話もあります」

 最新の技術やビジネスも、使い方次第で「悪魔の道具」に一変するようだ。(本誌・小泉耕平)

週刊朝日 2018年3月16日号