本人と話をしたが、それは十分理解しており、「難しい」と話していた。ただ、下半身をしっかり使う一定の指標となる歩幅が、ここ数年より半歩近く伸び、下半身にも張りが出たという。ようやく投手としての基本的な動きができるようになった。次は上半身にいかにパワーを伝えるかだが、精度は当然のように低い。下半身に“粘り”がないから、踏み出す左足がバタッと着いてしまう。左足が着くまでの時間を稼げないと、右腕が上がりきらず、無理やりに腕を振ることになる。

 彼ならたとえ70点程度の完成度でも、1軍のマウンドには立てるだろう。だが、それでは長続きしないし、ジリ貧になる。これまでの繰り返しとなってしまう。一度投げて、登板間隔を空け、少しでも精度を上げる時間を設けて2試合目へ向かう。その繰り返しで、矯正を続けてほしい。

 ファンの方々も期待値をどこに置くかで大輔への見方は変わると思う。プロ選手なのだから、期待に応えるのは使命だ。だが、大輔にはこれからは自分のために野球をやってもらいたい。彼も20年目を迎えた。私もプロ20年、38歳シーズンで現役を引退した。残された時間は多くはないのだから。

週刊朝日 2018年3月9日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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