「当日は準決勝と決勝と、高木姉妹は2試合出る。一番大きい彩花が風を受けて壁となり、後ろの2人の足の負担を軽くすることが役割でした。責任感の強い子ですので、役目を果たせて本当に良かったと思います。負けたら終わりの状況の中で、私から見ても快心の滑りでした」

 決勝は高木姉妹と佐藤綾乃選手が出場。オランダとの直接対決を制した。

「決勝戦を見ながら、彩花はずーっと祈っているみたいな感じでしたね」

 金メダルが決まった瞬間、菊地選手は、コーチにねぎらわれ、涙をぬぐっていた。決勝の翌日、メダルセレモニーが開かれたが、その歓喜の記憶は今でも脳裏に焼き付いているという。

「セレモニーが終わり、私は夫と一般の立ち見席にいました。選手の控室から彩花が出てきて、真っ先に夫に金メダルをかけてくれた。で、次に私にかけてくれました。彩花が小さい頃から、私は忙しくて、いつも背中でおんぶしていて、子供を抱きしめたという記憶がないから、このとき初めて抱きしめたというか、ハグをして思いが込み上げました。私が彩花の耳元で『あーよかった』と言ったら、彩花は『ありがとう』と短く答えました」

次のページ