衆院予算委終了後、心なしか安堵の表情を見せた安倍首相(c)朝日新聞社
衆院予算委終了後、心なしか安堵の表情を見せた安倍首相(c)朝日新聞社

 五輪のメダルラッシュの陰で、国会では安倍政権の“ウソ”が次々と露見している。まずは、裁量労働制をめぐる厚生労働省のデータがデタラメだった問題だ。

 厚労省は一般労働者のほうが裁量労働制で働く人より労働時間が長いことを示すデータを作成し、安倍晋三首相もこれに基づき答弁した。だが、調査は一般労働者にだけ「1カ月で最も長く働いた日の残業時間」を尋ねていて、前提の違うデータを比較していたのだ。

 安倍首相は「答弁が厚労省から上がってくる。私はそれを参考にして答弁をしたということ」(2月20日の衆院予算委)と、責任転嫁するばかり。国会でこの問題を追及する柚木道義衆院議員(希望の党)が語る。

「単純ミスでこんなデータを作成することはあり得ず、官邸に忖度(そんたく)して意図的につくったという疑念を抱かざるを得ない。霞が関全体に『佐川現象』が蔓延しているのでは。安倍首相は『答弁』は撤回したが、データそのものは撤回していない。間違ったデータに基づいて議論していたのだから、データを撤回し、労働政策審議会(労政審)から審議をやり直すべきです」

 そもそも労政審での議論にも不可解な点があった。裁量労働制での労働時間は、厚労省所管の労働政策研究・研修機構(JILPT)が2013年に調査を実施したが、そこでは裁量労働制の労働者のほうが労働時間が長い傾向にあるという結果が出ていた。厚労省とは逆の結果だったにもかかわらず、労政審では紹介されていなかった。前出の柚木議員がこう指摘する。

「JILPTの調査は労働者に直接尋ねているが、厚労省の調査は事業者側から聴取したもの。事業者が長時間労働を申告すれば指導対象となる恐れもあるため、正直に答えていない可能性もある。政府は労政審で『おおむね妥当』と結論が出たと強調するが、これは残業時間の上限規制なども抱き合わせで審議され、いわば『人質』をとられていたから。サービス残業強制法案(裁量労働制の対象拡大)を分離して再議論すべきだ」

 2月21日には、厚労省の調査結果から同じ人の残業時間で1週間より1カ月のほうが短いなど、異常な数値が117件もあることが露見。政府が「ない」と主張していた調査原票が厚労省の地下倉庫から見つかっていたことも明らかになった。“炎上”が続くが、政府は野党が求める法案の撤回には応じない。元経産官僚の古賀茂明氏はこう語る。

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