いま、この寒い時期に仕込もう。約半年後から食べごろだ
いま、この寒い時期に仕込もう。約半年後から食べごろだ
中川たま(なかがわ・たま)さん/料理家。神奈川県逗子市で夫と高校生の娘と暮らす。季節のエッセンスを加えた手仕事に日々勤しんでいる。最新刊は『季節の果実をめぐる114の愛で方、食べ方』(日本文芸社)
中川たま(なかがわ・たま)さん/料理家。神奈川県逗子市で夫と高校生の娘と暮らす。季節のエッセンスを加えた手仕事に日々勤しんでいる。最新刊は『季節の果実をめぐる114の愛で方、食べ方』(日本文芸社)

 自分で味噌を作るなんてできるかなあ、面倒くさいんじゃないかなあ。いいえ、そんなことおっしゃらずに挑戦してみてください。

【写真】味噌の手作りを始めて12年の料理研究家・中川たまさん

 料理家・中川たまさんは味噌の手作りを始めて、かれこれ12年になる。

「私も初めは『大丈夫かな』『難しくて自分にはできないんじゃないかな』と恐る恐る始めたんですよ。家で自分一人で作れるわけがないと思いながら、丸一日かけて仕込みました(笑)」

 仕込みを始めてみたら、実は単純作業が多かった。

「一晩水に漬けた大豆をゆでて、米糀、塩と混ぜ合わせる、ということが基本工程ですから。作業としてちょっと大変に思われるのは、ゆでた大豆をすり鉢でつぶしていく作業でしょうか。大豆をしっかり均等につぶしていったほうが、発酵にムラが出ないのでおいしく仕上がるのです。ちょっと時間はかかりますが、すりこぎで大豆をゴリゴリつぶしていくのも、結構楽しいですよ」

 時間がないときはもちろん、フードプロセッサーを使ってもかまわない。大豆をすべてすりつぶしたら、米糀と塩としっかり混ぜ合わせ、耳たぶくらいのやわらかさの団子をいくつも作っていく。

「これを“味噌玉”と言います。大きさは握りこぶしくらいでしょうか。これを消毒した保存容器の底めがけて投げつけていきます」

 おや、これもいいストレス解消になりそう。

「この作業をすることで味噌の中の空気が抜け、雑菌が繁殖しにくくなります」

 そして味噌玉を保存容器に敷き詰めたら、その上に酒粕を敷き、塩をまんべんなくふる。そのあとラップ、重石、新聞紙でフタをして、冷暗所に置いて味噌の発酵を待つ。

「手作り味噌で一番気になるのはカビ問題です。自然素材だけで作っていますから、カビは生えて当然なのですが、被害を最小限に食い止めるために酒粕で味噌を覆うのです。カビが生えやすいのは空気が触れている上面ですから、カビが生えるとしたら、この酒粕の上の部分から生えます。酒粕のカビを発見したら、すぐにその部分だけ取り除けば、その下の味噌の部分にカビは生えません」

 味噌は寒い時期(1~3月)に仕込んで、じっくり熟成させるのが一番。

「気温の低い時期に仕込むと発酵もゆっくり進んでいきます。ゆっくり発酵した味噌は滋味深くておいしいですよ。毎年同じように作っても、その年の気候によって全然違う味わいになるのも面白いです」

 今から仕込めば、夏の暑い時期が食べごろだ。

「自分が作った味噌をつけて食べるだけで感動します。米糀がしっかり感じられるので、糀好きにはたまらないと思います」

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手作り味噌の作り方