真顔の友人。一緒に楽しんでると思ってたのにそうでもなかったようだ。「あと1回、チャンスをやる。これで最後だ」
どうやら友人のお母さんも階下で痺れをきらしている様子。つーか、お母さんに話すなよ。
2まで回すと……突然の便意。お昼に食べたサラダ巻がよくなかったか。「ウンコ、したくなっちゃった……してきていい?」「おい! お前の人生だぞ!(怒)」。大袈裟。でもその時は本気。「だよな!」。2まで回しきった。戻るダイヤル。「はい、もしもし……」。あ、出た。ウンコではなく彼女が。必死で括約筋を締める私。腹を突き上げる痛みが物凄いことになってきた。カニかまが、サラダ巻のカニかまが古かったにちがいない。ダメだ……。
「あーっ! 好きですっ! 付き合ってください! じゃっ!」。ガチャン! ダダダーッ! ……ジャーッ! 名前も告げずに、雑に告白して、すぐに電話切って、階段駆け下りて、ウンコして流した。水流に吸い込まれていくウンコと恋。
「……なにしてんだよ?」と呆れ顔の友人。「ウンコだよ!」
逆ギレの私。「ウンコ先にしとけばよかったのに、ウンコさせないからこんなことになっちゃったんじゃんか! スゲー腹痛くなってさ、洩らしちゃうよりいーだろ!? もーいい! もーいい! もーいいよっ!」。ちゃんとは覚えてないが、こんなことを叫んで友人と喧嘩別れして、家で泣いた。
翌日、その女の子の周囲は「昨日、ものすごく焦った知らない人に電話で告白された」話で盛り上がっていたっけな。何が言いたいかと言うと、ハッピー・バレンタイン・ボーイズ&ガールズ。
※週刊朝日 2018年3月2日号