この集まりを「女性の定年を考える会」と呼ぶ人もいる。当初は、企業で得た仕事のスキルを若い世代に手渡したいと考えていたが、いまは仕事の悩みや、これからの生き方、日本文化まで幅広いテーマを話し合う。

 企業のセミナーのように型があるわけではない。「シェア」をテーマにした回では、地方の両親の家をどうするか、といった話題から発展し、実際に、両親亡き後の自宅を開放して地元の人々が集まる空間にした50代の女性もいる。

 別の回では、「嵐のバックコーラスをやりたいね」と盛り上がったこともある。久慈さんが苦笑する。

「戦略を練るのが大好きな元・現役キャリアウーマンの集まりです。全員でどうすれば実現できるか、次の一手は?と大真面目な顔で作戦会議になりました」

 自分はこんなこともできる、と可能性を見つける場でもあるのだ。

「定年後は下降線」だなんて人生の放物線を描かないで、と鈴木さんが言う。

 地域の知り合いや趣味での知人など、横のネットワークを構築するのが上手な女性は、男性のような濡れ落ち葉的な定年後人生の恐れはあまりない。

 企業定年はただの線引き。80歳まで働くもよし、趣味に生きるもよし。どんな局面でも、おもしろがった人生が勝ちなのだ。(本誌・永井貴子)

週刊朝日  2018年3月2日号