【文豪の湯宿】井伏鱒二が“釣友”と談義 湯治場で有名な「古湯坊 源泉舘」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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【文豪の湯宿】井伏鱒二が“釣友”と談義 湯治場で有名な「古湯坊 源泉舘」

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鈴木裕也週刊朝日
宮の間3階、鳳凰のステンドグラスがある10畳間を好んだという

宮の間3階、鳳凰のステンドグラスがある10畳間を好んだという

本館ロビーに飾られている文豪の写真

本館ロビーに飾られている文豪の写真

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる新連載「文豪の湯宿」。今回は「井伏鱒二」の「古湯坊 源泉舘」(山梨県・下部温泉)だ。

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*  *  *
 武田信玄の隠し湯として知られる下部温泉で江戸中期に創業した古湯坊 源泉舘は、現在も湯治場として有名だ。裏手にある熊野神社には、足を痛めた湯治客がここで全快し、用済みになった松葉杖を奉納して帰ったという逸話もある。

 昭和4年、31歳の井伏鱒二は持病の神経痛の養生のために初めて下部温泉を訪れた。当初は別の宿に宿泊していたが、源泉舘の共同湯を気に入り、以降は定宿とした。

 作品集『川釣り』に収められている随想「雨河内川」は逗留中に書いたにもかかわらず、源泉舘に“泊まらなかった話”だ。雑誌に掲載された釣り談議での発言を宿の当主に指摘されることを心配して別の宿に泊まったことが、街で出くわしたなじみの理髪店主にバレてしまう。

〈おや、お客さん鶴亀屋へ泊つてるのかね。源泉館は、もう満員かね〉

 57代目当主によると、文豪はいつも源泉を樽に詰め、日々の飲料水としていたという。滞在のたびに、親友となった理髪師との釣り談議やヤマメ釣りに熱中した。

 最後に訪れたのは昭和48年、75歳の時だった。

(文/本誌・鈴木裕也)

■古湯坊 源泉館(こゆぼう げんせんかん)
山梨県身延町下部45

週刊朝日 2018年2月23日号


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