もうひとつ、実感したのは「コモンセンスはない」だった。

「シンガポールにはいろんな宗教や国籍の人たちが寄り集まっている。だから“違いがある”のが当たり前。たとえば娘が通うインターナショナルスクールは1クラス20人に10以上の言語が飛びかう。共通の常識があまりないので日本人特有の“同調圧力”をかけるのは無理です。納得できないことには『なんで? 私は嫌だよ』と言い返すのは当然」

 日本では見慣れた不祥事の「謝罪会見」に対しても違和感が強くなった。

「あれは、ミスを許さない日本社会ならではの儀式なんですよね。海外では“事態改善”“再発防止”が最優先。思ってもいない言葉や無理に作った表情で謝ることに時間とエネルギーを使う暇ないだろ!ですよね」

 他人の足を引っ張ろうとするのは、それだけヒマをもてあましているからだという。

「競争が激しく物価が高いシンガポールでは皆生きるのに必死なのです。ヒマな時間があるなら一銭でも収入や資産を増やすことに使います。自分や家族のための時間も大切にする」

 いい意味で自分中心の環境では、上司の顔色をうかがいながらの居残り残業も起こりえないという。

「うちの大学の秘書さんなんて、僕がどんなに忙しくしていようとも自分の仕事を片付けたら退社しますから(笑)。“意味なく”他人に関心を持つ日本とは違うのです。ただ、当初は正直、さみしく感じたこともありました」

 しかし、いまや子供と食事をともにする時間が増えて、楽しい。さらに悩まされた「アホ」もまわりには皆無。戦わない毎日を満喫しているという。(朝山 実)

■4タイプの「アホの人」
【1】ストーカー型
いきなり「おまえは……」と絡んでくるアホ
「こちらが感情的に反応すると喝采する。ヒマをもてあましたこういう人たちはすべてスルーするのがいちばん。どう反応しようかと考える時間がそもそももったいない」

【2】工作員型
ウソやデマを流し、陰湿なイジメを企むアホ
「立腹しての反撃は禁物。陰で足を引っ張ろうとするこのタイプは嫉妬が動因の場合が多い。冷静に調査し、キーパーソンとなる人物に正確な情報を伝え、逆に孤立化させる」

【3】パワハラ型
権力をかさに理不尽なアホ
「部下の心をズタズタにする言葉を投げつけても無自覚な上司はどこの会社にもいます。しかし、永遠にその立場にいるとも限らない。従順なフリをして、聞き流すのがいちばん」

【4】キリギリス型
指示されたことしかしないアホ
「使えないと嘆くのは禁物。仕事の指図は目的とともに具体的であること。若い世代は外国人だと思えば『わかるだろう』といった期待値は下がり、ストレスもなくなる」

週刊朝日  2018年2月23日号