「父母に、自立した考えの人が多いのが幸いしました。それはアンフェアだと以降のイジメも防げましたが、エスカレートせずにすんだのは、カッカしていたときに家内から『こんな本を書いているんだから』といさめられたおかげです」

 パワハラ上司の「アホ」対処法も聞いた。ここは徹底的な聞き流し戦術だ。

「向こうではパワハラをしかけてくる上司がいたら我慢などせずに辞める。転職マーケットがあるからでしょうけど。どうしても辞められないのであれば、戦わずに聞き流す。口答えをすると逆上させるだけですから。大事なことはオプションを持つ。ここしかないと思うことが自分を追い詰めてしまう。いざとなったら辞めてやるというモビリティー(変動性)を持つことが、戦わないカギになる」

 逆に、部下に悩まされている中間管理職も多い。田村さんの回答は明快だ。

「世代間ギャップもありますが、日本でも職場に外国人が増えてくるでしょう。若い世代や外国人に『言わなくてもわかるだろう』と多くを期待してはいけない。仕事の指示は数字で具体的に、目的は何かを教える。コモンセンス(共通認識)を若い世代や外国人に求めることが無理なように『違い』を前提にすればストレスもなくなりますよ」

 田村さんがシンガポールに移住を決めたのは子供の教育を考えたのと、アホに煩わされず自分を生かせる場所を求めてのこと。海外生活で考え方も変わったという。たとえば「謝罪」に関して。

「タクシーが道を間違えたときに、向こうの運転手は『オー、ネバーマインド。狭いシンガポール、いつかつくよ』とノンビリしたもの。『こっちのセリフだろ!』とも思いますが、日本だと約束の時間に遅れかねないとハラハラ、イライラしますよね。でも、少々遅れたところで相手も気にしない。欧米人になると、さらに謝りません。同僚はミスしても『OK。レッツ・ムーブオン(次に行こうぜ)』ですから。お前が言うな!ですが、私もそれでいいと思えるようになりました」

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