私はメディアにも不満がある。辺野古への移設に反対なら、どのようにすべきなのか、具体策を示さない。あるいは米軍を沖縄から撤退させるべきだと主張したいのか。であるならば、安倍政権に具体的に日米安保条約のどこをどのように変えれば良いのか、指摘すべきである。

 現在は日米地位協定なるもので、日本が実質的に米国の植民地のような状態にされていることが、少なからぬ国民の知るところとなった。たとえば1983年12月に、外務省がつくった高級官僚向けの極秘マニュアルの中に、

〇米国は日本国内のどんな場所でも基地にしたいと要求することができる。
〇日本は合理的な理由なしにその要求を拒否することはできず、現実に提供が困難な場合以外、米国の要求に同意しないケースは想定されていない。

 という見解が明確に書かれている(矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』)。

 そして、そのしわ寄せを、ほとんど沖縄が受けているのだ。こんなことは、どのメディアの幹部もわかっているのに、そのことをまったく言わない。ただ「移設反対」と叫んでいる。名護の多くの市民たちは、そのために疲れ果てたのである。

週刊朝日  2018年2月23日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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