合格者の顔ぶれを見ると、「国際化学オリンピックメダリスト」(工学部合格者)など、東大に劣らない面々が集まっている。

 京大では募集人員の拡大や出願要件を変更するなど、特色入試を充実させている。背景には、同じように特色のある入試で人材を集めようとしている、大阪大の存在がありそうだ。

 大阪大は前年から、AO・推薦入試「世界適塾入試」を始めた。今年は前年比70%増の565人が志願し、合格者は49%増の176人となった。出願要件を緩和したことなどで人気となった。小林傳司副学長は「ようやく選抜として機能してきた」と話す。

 適塾入試の今年の合格者の57%が女性。特に「リケジョ(理系女子)」が目立つ。理系学部における女子の合格比率は一般入試だと2割程度だが、適塾入試では47%にもなる。「理学部【挑戦型】」では4人全員が、医学部医学科も4人全員が女性だった。小林副学長は「女性のほうが、なぜこの学部に行きたいかを一生懸命考えて、志望理由を書く傾向がある。理系女子を獲得する機能を果たしている」という。

 大阪大も東大や京大に負けないよう、全国から優秀な学生を採ろうとしている。一般入試より一足早く、推薦入試などで人材を囲い込む動きは、ほかの大学でも強まっている。

 国立大学協会によると、21年度までにAO・推薦入試などの入学定員の割合を、全国立大で3割にする目標を掲げる。AO・推薦入試の募集人員は、今後も増える見込みだ。代ゼミの川崎さんもこう見る。

「新しい入試制度が広がる中で、勉強を含めた高校活動全体を評価する動きもあります。部活動などに積極的に取り組む学生の割合は増えていくでしょう」

 一度のペーパー試験だけでなく、課外活動を含めた実績が問われるようになっている。入試の多様化で選択肢は増えるが、合否の基準はわかりにくくなる。受験生や親にとっては、何をすれば受かるのかはっきりしない。AO・推薦入試がより広がるのであれば、制度の透明性が課題となりそうだ。(本誌・吉崎洋夫) 

週刊朝日 2018年2月23日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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