募集定員割れの課題はあるが、推薦入試の成果は出ているという。その一つが学生の多様化だ。東大によると前年の一般入試では、首都圏の高校に通う合格者は57%、女性の合格者は19%だった。これが今年の推薦合格者だと、首都圏が36%に低下し、地方の高校出身者の割合が一般入試より多くなっている。女性も42%と比率が高い。

 地方の女子生徒は、東京の大学よりも地元の国立大学などを志願する傾向があり、こうした人材を取り込もうという戦略が、数字にも表れている。

 石原さんもこう解説する。

「以前は後期日程で地元の国立大を受けて、前期は思い切って東大という考えもありました。後期が少なくなり、前期から地元の国立大を受ける『安全志向』が強まっています。経済的な理由もあって、浪人しにくい人もいる。推薦入試はこうした人たちが思い切って挑戦する受け皿になっています」

 入学後はどのような学生生活を過ごしているのか。1年目から研究室に所属したり、学会で論文を発表したりするなど、早々に活躍している人もいるそうだ。福田副学長は高く評価する。

「飛びぬけた成績を持っている人や、極めてアクティブにいろんなことをしている人がいる。一般入試ではいなかったタイプが確かにいる」

 1期生は今年の4月から3年生になる。将来の進路選択が視野に入っている。福田副学長は、「日本を変えるためのフラッグシップとなれるような人材」と期待する。就職や大学院への進学など、推薦入試合格者たちの選択が注目される。

 東大と同じく3回目の合格発表となった京大の特色入試。今年は志願者数が前年比46%増の547人(法学部は除く)と、大きく増えた。工学部や薬学部で新たに募集を開始したことが、増加につながった。

 合格者は9%増の106人。志願者ほど増えず、募集定員135人を下回った。代々木ゼミナール教育総合研究所入試情報室長の川崎武司さんはこう見る。

「京大は出願の時点で大学入学後の『学びの設計書』などを提出します。その段階でかなりハードルが高く、優秀な生徒が出願します。それでも合格者が大きく増えなかったのは、それぞれの学部・学科で厳しい基準があり、しっかりと生徒を見極めています」

次のページ