監督官庁の金融庁は1月29日、コインチェックのセキュリティー対策や顧客対応が不十分だとして、再発防止や内部管理の強化を求める業務改善命令を出したが時既に遅し。未登録の業者が国内最大規模の取引所に成長し、テレビCMを打つようになっても彼らを野放しにしていた。金融庁の責任も免れないだろう。

 仮想通貨は中央政府や銀行とは無関係にネットの技術を使って、通貨の取引が安全に行えるというところに革新性があった。24時間瞬時に世界中に送金できたり、オンライン上で改ざんされない契約書が作れたりした。技術的には様々な可能性を持っているが、バブル化したことですべてが投機対象となり、FXなどと変わらない射幸心をあおるギャンブルになってしまっている。

 これだけ価値が乱高下していたら日常的な「通貨」としてはとても使えない。金融は信用があってはじめて成り立つものだ。今回の事件はその事実を改めて我々に突きつける契機となったのかもしれない。

週刊朝日  2018年2月16日号

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津田大介

津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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