前後に動力車を持つ客車8両編成で、私が乗った便は先頭の8号車が自由席だった。2+2列にリクライニングシートが並ぶ。3号車はグリーン車に相当する「特室」で、こちらは1+2列と余裕がある。指定席は売り切れだったわけだが、自由席には半数以上の余裕を残し、清涼里駅を後にした。

「韓国の新幹線」ではあるが、萬鐘までは同じ線路を機関車牽引の在来線列車や貨物列車、日本と同じタイプの通勤電車が行き交う。ちょっぴり奇異に見えるが、日本と違って車体やレールが標準軌(1435ミリ)で統一されているためだ。ここではさすがに「最高時速305キロ」の実力は発揮されず、慎重に(?)進んだ。せいぜい時速160キロほどだろうか。

 萬鐘を過ぎて京江線に入ると、そこまでの鬱憤を晴らすかのように速度をアップ。時速約250キロは出しているという。

 気がつけば、車窓の丘陵が雪で覆われている。今冬は冬季五輪開催に合わせるように雪が多いとか。風景は悪くない。だが、トンネルが多い。気圧の関係か、時折、飛行機に乗ったときのような耳ツンが起きる。韓国の列車では初めての体験で、この日は何度も悩まされた。

 8時28分、屯内に到着。下車し、駅前を散策した。周囲は雪で真っ白だ。木目調に格子柄がデザインされた駅舎はリゾート地ふう。ちんまりとした町はあるものの、五輪景気らしいにぎわいはちっとも感じられない。

 駅に戻り、今度は上り列車に乗り込む。ほぼ満席だ。13分間の乗車で萬鐘に着いた。慶州に至る中央線との分岐駅だ。駅周辺は素寒貧としており、見るものがない。こんな旅でもなければ降りることもないだろう。

 今度は下り線に乗車。いよいよ平昌で降りる。フリースタイルスキーとスノーボードの競技場の玄関駅となり、会場へのシャトルバスの案内表示がある。構内や駅前ではマスコットキャラクターの「スホラン」と「バンダビ」が出迎えてくれ、やっと五輪らしい雰囲気に出会えた。

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