家族だけでは高齢者を支え切れないのが現実。地域全体でいかに支え手を増やすか。さまざまな取り組みが始まっている。

 西脇市(兵庫県)は16年から、宅配便大手のヤマト運輸と提携している。同社のドライバーが月1回、高齢者宅約220世帯を訪問。その際に、体力維持や交通事故の防止など高齢者向け情報が掲載されたパンフレットなどを手渡しする。それとともに、日常生活について簡単な質問を毎回、投げかける。

「最近、外出しましたか」

「出すぎて困るねん。じっと家にようおらんわ」

 市内に住む田中悦子さん(75)は毎月、こんなやり取りでドライバーを笑わせる。「道を歩いていても、運転席から手を振ってくれたり、声をかけてくれたりする。気心の知れた人がいるのは、もし外出先で何かあったときにも安心だ」

 見守りの対象は、比較的元気な高齢者としている。介護サービスや市からの緊急通報装置貸与などを受けていない人だ。ドライバーは、外出頻度や家族以外の人との会話の有無など、ヒアリング結果や配達先で感じた変化を市役所へ報告する。受け取りサインの乱れに気づき、報告を受けた市の担当者が認知症の疑いがあると判断し、見守りを強化したケースもあるという。

 市長寿福祉課の比留田展忠さんは「これまで元気な高齢者への目配りは手薄だった。ドライバーの目を通して、高齢者の現状をいち早く知ることができるのは大きい」と話す。

 ヤマト運輸は青森県深浦町や富山県氷見市でも、定期刊行物の配達を通じた見守りを同様に進めている。特定の高齢者対象ではなく、通常業務中に配達先の異変に気づけば行政などに連絡する取り組みもある。こうしたものも含めると、全国280以上の自治体と連携しているという。

 日本郵便は17年10月から、直営郵便局の社員などが高齢者宅を月に1度訪問し、体調などを聞いて家族にメールで報告する有料サービスを始めた。すでに数千件の申し込みがある。「数年後に数万件規模に拡大したい」(同社)という。

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