NTTドコモや玩具メーカーのイワヤなどが開発したのは、クマのぬいぐるみ型ロボット「ここくま」。音声認識や発話機能があり、一人暮らしの高齢者宅に置くと、話し相手になる。

 その利用履歴は離れて暮らす子ども世帯に届き、親が元気に過ごしているかがわかる。子ども世帯宅の電話から、メッセージを留守番電話のように吹き込むこともでき、高齢者宅のぬいぐるみで再生できる。高齢者世帯から子ども世帯へも音声メッセージを送れる。

 いずれのサービスも今のところ、40~50代の子ども世代が親に働きかけ、使い始めるケースが多いようだ。

 象印マホービンが、電気ポットによるサービス「みまもりほっとライン」を01年に事業化したのは、ある出来事がきっかけだった。東京都内で1996年、病気の男性と高齢の母が死後約1カ月経って見つかったことだった。

 東日本大震災直後、節電意識の高まりや、家族が一緒に暮らす傾向が強まったことなどから、契約数は一時落ち込んだ。しかし、最近は高齢者の子ども世代にターゲットを絞り込んだネット広告の効果などもあり、「増加基調を維持している」(事業担当の川久保亮さん)という。

 一定時間ポットが使われないと、子ども世帯は不安を感じてしまう。そこで、外出や帰宅を通知するボタンを付けるなど改良も加えてきた。高齢者宅の緊急事態を想定しているのではなく、生活リズムの変化をいち早く知るしくみだと、顧客には説明している。

 ポットはレンタルで、解約後は同社に返却する。返却時のポットや手続き書類に「病気にいち早く気づけた」「死に際を看取ることができた」と手紙が添えられることも少なくない。

 前出の川久保さんは「利用者それぞれが運用の仕方を工夫して、電気ポットをうまく使ってくれている」と実感している。

 国民生活基礎調査によると、65歳以上の一人暮らし世帯は、2016年6月時点で655万9千世帯。全高齢者世帯に占める割合は27.1%に達する。50年には高齢者1人に対して、20~64歳が1.2人となり、「一人の現役世代が一人の高齢者を支える社会」が訪れる。

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