60代後半ともなれば、メタボよりフレイルに気をつけるとよい。進行すると、肺炎、心臓疾患、転倒骨折などを起こしやすい。

「健康な人が要介護になるまでには、大きく二つのケースがある。一つは60~70代に心筋梗塞や脳卒中で倒れるケース。中年期からの生活習慣病を悪化させた人が多い。もう一つはフレイルが70~80代に少しずつ進行するケース。大半は後者のパターンです。健康寿命を延ばすには、フレイルにならない対策を早くからとる必要があります」(前出の新開さん)

 体が元気なうちはジョギングや水泳などの有酸素運動も無理なくできるが、高齢期になると難しい。どんな対策がよいのだろうか。

「高齢者とひとくくりに言っても、前期高齢者と後期高齢者は体力が違います。60代のうちは、ジョギングやダンベル、腹筋運動もできます。ジョギングするほどの体力がない70代以降の人には、15分程度のウォーキングと自宅で簡単にできる筋トレを勧めています」(同)

 確かに、体力や運動能力は年とともに衰える。片足をあげたままで立ち続けられる平均時間は、65~69歳女性90秒に対し、75~79歳女性58秒。6分間で歩ける距離は、65~69歳男性629メートルに対し、75~79歳男性582メートル。今の体力をできるだけ維持するには、筋トレなどの運動習慣が欠かせない。

 代表的な筋トレは、椅子を使いながら足腰を中心に鍛える体操。10回1セットとし、1日3セットが目安。体調に合わせて増減させるとよい。

 下半身の筋肉を鍛える効果的なエクササイズが、スクワット。女優の故森光子さんは舞台に立ち続けるため、スクワットを毎朝夕75回ずつしていたという。

 両足をやや開き、腰に手を当てて5秒かけてゆっくりと腰をかがめ、元に戻す。10回を1セット、1日3セット続けると、筋肉の萎縮を防げるという。

 フレイルは、日本老年医学会が14年に提唱した新しい概念。「老衰」と言うと、加齢に伴うもので避けられない印象を与えるが、フレイルは適切な対策で再び元に戻れる(可逆的な)状態という考え方だ。体力の衰えだけでなく、生きがい喪失など精神状態の悪化、地域とのかかわりなど社会参加の意欲を失うことも関係する。(村田くみ)

週刊朝日 2018年1月19日号より抜粋