自分が舞台で演じるとき、どんなに権威のある作品であっても、“決して有り難がらないこと”をモットーにしている。古典ならなおさら、その作品が持つアカデミックな感じを崩していきたいと思うのだそうだ。

「芝居ファンの裾野ってなかなか広がらないけれど、それはたぶん、高校のときの演劇鑑賞会がトラウマになってるんですよ。たいがい教師から、『静かに観なさい!』なんて強制されるじゃないですか。でも、芝居の観方なんて、自由でいいと思う。真面目なタイプよりもやんちゃなヤツのほうが、よっぽど演劇に向いてたりするものだし」

 近松門左衛門の心中ものを現代的な視点で劇化した、「近松心中物語」を、いのうえひでのりさんが演出することになった。登場するのは、崖っぷちに立たされた男女2組。池田さんが演じるのは、なかなか心中を果たせない与兵衛の役だ。

「往生際の悪い、情けない男の役です。美しく心中する2人との対比を楽しんでもらえたら(笑)」

 自分が古典作品に出演するときは、つい、やんちゃだった少年時代の血が騒ぐ。50歳を過ぎた今も、演出家から怒られたり、時々褒められたり。

「いくつになっても、人から軽く見られたいタイプなんで、まだまだずっと怒られていたいです」

(取材・文/菊地陽子)

週刊朝日 2018年1月19日号