●再びユニホームを着る日は来るのか
重松:やっぱり監督業はそこまで負担なんですか?
星野:うーん。やっぱり、勝負に対するストレスというのはすごいんですよね。だから、ストレスがなくて、本当に物足りない。(笑い)
重松:そんなこと言っていたら、本当に来年も大きな問題が襲ってくるんじゃないですか。でも、そこまで自分を追い詰めたユニホームを、もう一度着るという可能性はどれくらいあるんでしょうか。
星野:これはタイミングの問題ですよね。需要と供給と、世の中のタイミングが合えば、ひょっとしたらあるかもしれませんし、やっぱりずっとないかもしれません。でも、今の自分はないと思っています。生きていればタイミングというものがありますからわかりませんが……。人間というのは、どうしても自分のポジションを奪われたくないと思ってしまいますからね。そこのところをどう柔軟に考えていくかです。
重松:でも、可能性はゼロではないと(笑い)。最後まで、現役だという志向はもちろんあるわけですよね。
星野:そうですね。体が元気なうちは、やはりそう考えます。体が元気で、それから精神的なことや技術的なことに考えが及びますからね。
重松:体が元気でなくなると、「もう、どうでもいいや」って感じになってしまいますよね。でも、星野さんは、「どうでも、ええわ」だけは一度も思ったことはないんじゃないですか。
星野:いやいや、ときどきは思いますけどね。でもここ一番となったら、絶対戦います。
重松:その姿から僕らは元気をもらっているわけです。
星野:僕は団塊の世代で、その世代の男たちを代表しているつもりでいる。だから「あいつ頑張っているな」「でも、あいつ俺と同じ年だ」と同世代のエネルギーを呼び起こす役目があると思っています。だから、僕はいつも怒っていて、その辺のもの蹴飛ばして、頑固オヤジの部分を見せなきゃいけない。そう思っているんです。
※マスターズ甲子園……高校時代に甲子園に憧れていた人たちがOBになってからも、出身高校別の野球チームを結成し、甲子園でプレーすることを目指している。今年で3回目になる大会。今年は11月4、5日に開催予定。星野SDはこの大会の名誉会長、重松氏は応援団長としてかかわっている。
(構成/本誌・四本倫子)
※週刊朝日 2006年7月28日号(「星野仙一、団塊の『頑固オヤジ』としてもの申す」)より再録