星野:どの分野でも世代交代は大事ですからね。ただ、伝統を受け継がない日本人はすぐに「もう、年寄りは邪魔だ」と考えるんですよ。とても悪いところです。今度のサッカーのW杯でね、世界各国の選手たちが、試合に出られなかったことや、負けたことに対して涙を流している姿を見て、日本の野球人と比較してしまったんです。「オリンピックのために野球やってるんじゃない」とか、「WBCよりもシーズンが大事だから選ばれたくない」なんて、なんで言うのかと。そんなものの見方をしている野球選手というのは、なんと野球を愛していないのだろうか。どうして、子どもたちに野球のすばらしさを伝えようとしないのか。野球選手のバカ野郎ってね。王さんが、こんな大きな病に侵されてしまったことも含めて悔しくてね。

重松:王さんは、そこまでの負担を背負いながらやってこられていた。

星野:そうですよ。それをどう考えているんだろうと思うと、グッときますね。

重松:野球の始球式にはアイドルが出てきますよね。星野さんが現役だったら、あのお尻を蹴っ飛ばすんじゃないかなと思いながら見ているんですが。(笑い)

星野:あれは嫌ですね。勝負から離れたら「かわいいな」って思うかもしれませんけどね(笑い)。短いスカートをはいてパンツが見えて、おっぱいがポロンと出るような派手な格好をして出てきやがると、「おい、ちょっと待てよ。俺がこれから1年間の生活をかけるのに、先に投げやがって」って思いますよ。でも、こういうのが受ける時代なのかもしれないな。実際、新庄(剛志選手)なんかはパフォーマンスの部分ばかりが取りざたされているからね。時代は遠くなりにけりです。

重松:王さんの胃の腫瘍や、長嶋さんの脳梗塞にショックを受けたように、星野さんの心臓のことも心配しています。大丈夫ですか。

星野:いや体はね。ユニホームを脱いだら元気なんですよ。3カ月くらいで血圧もすぐに正常になりました。僕たちスポーツ選手のいけないところは、「たいしたことないわ。こんなもん」と、「これだけ鍛えてきたんだから、俺に限ってそんな病気になるはずない」と、過信するところですね。これが大きな落とし穴ですよ。とくに監督をやると、神経はやられますし、内臓も心臓もやられる。だいたい長いこと監督をやられている方はみな、この3カ所のどこかやられてますよね。

次のページ