大人になってから、あらためて漫画を読み返してみると、また違った魅力に気づかされたという。

「その時々の時代を反映しているストーリーが多く、しっかりと読み応えがある。時に皮肉や風刺が利いていたりと、ほのぼのイメージが強いアニメとは、また違った雰囲気が味わえます。これは、大人のための漫画だなと思いました」

 家族みんなで囲む食事に、日々の家事、近所との付き合い、四季を感じる行事の一コマ……と、何気ない日常が描かれているサザエさん。その世界観は、どこか伊藤さんに通じる部分もある。

「きちんとした暮らしと日常は、生活のベースになります。磯野家は、それぞれのキャラクターに役割があって、誰が欠けても成り立たない。家族がいるからこそ、日々の生活がかけがえのないものになるということを再認識させてくれます」

 かれこれ25年以上、スタイリストを続けている伊藤さん。常日頃、どんな物を選び、いかに組み合わせて表現するかを考え抜いているからこそ、漫画を読むときにもディテールに目がいくのだとか。

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