年金繰り下げは、1カ月単位で申請可能だ(c)朝日新聞社
年金繰り下げは、1カ月単位で申請可能だ(c)朝日新聞社
年金の繰り下げ請求と増額率(週刊朝日 2018年1月5-12日号より)
年金の繰り下げ請求と増額率(週刊朝日 2018年1月5-12日号より)

 長寿化が進み、定年後20~30年生きることも普通になった。しかし、総務省の「家計調査」(2016年)によれば、高齢夫婦無職世帯は、月平均で5万4711円が赤字。貯蓄・節約も必要だが、それ以上に定年後に細く長く働き続ける方が多くのメリットがあるという。

【図表】年齢別・年金の繰り下げ請求と増額率

 節約に加えてシニア層にこそ本気で考えてほしいのが、「収入」の確保。つまり、働いて収入を得ることだ。人口減少により、人手不足が進む今、60歳を超えて働くハードルは以前に比べ、決して高くはない。FPの山崎俊輔さんは言う。

「男女ともに長生きする今、想定より人生を長めに見積もって、財産を取り崩す計画を立てたほうが良い」

 山崎さんいわく、今や65歳まで働くのは「必須」。60~65歳の5年間が、鍵になるという。従来60歳だった定年を65歳に引き上げる動きは、少しずつ広がっており、65歳の定年退職後に嘱託社員として働ける継続雇用制度も広がりつつある。公務員の定年も65歳に引き上げる方針が、政府により固められたばかりだ。

「60歳を過ぎても、20~25年は普通に生きる時代です。だから65歳まではなるべく貯蓄を崩さず、退職金にも手をつけないで」

 実は60~65歳の間、再雇用などで働く場合、手取り額を増やす裏技がある。それは、毎月全額を「給与」としてもらうのではなく、一部を5年間積み立てて、「退職金」としてもらうことだ。退職金は「退職所得」として扱われ、他の所得より優遇された税制が適用される。課税対象になる退職所得の額は、収入(退職金)から勤続年数に応じた退職所得控除額(注1)を差し引き、残った金額の「2分の1」。勤続40年の人なら、2200万円までは所得税も住民税もかからない。社会保険労務士の北村庄吾さんは言う。
※注1 退職所得控除額の計算式/勤続年数20年以下の場合、40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)。勤続年数20年超の場合、800万円+70万円×(勤続年数-20年)

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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