【8位】北の富士×貴ノ花/昭和47年初場所

 8日目の取組で北の富士が貴ノ花に覆いかぶさるようにして同時に倒れ、北の富士が右手をついたんです。25代木村庄之助は「つき手」と見て貴ノ花に軍配を上げたけど、物言いがついて「かばい手」で北の富士の勝ちに。でもこれは、貴ノ花の体が生きてるんじゃないか、と今でも言われています。

 両かかとが土俵について両方のつま先が上がると死に体になり、そうなると、かばい手なんです。貴ノ花の体が生きていたら、つき手になります。いまだにつき手とかばい手の判断は難しい。この場合、取り直しはないんです。つき手と判断されれば手をついたほうが負けだし、かばい手なら下のほうが負け。25代は「貴ノ花の体が生きてるから、これはつき手です」と主張したのに、ひっくり返されてしまった。25代は進退伺を出した後、協会の返事を待たずに場所を休み、引退しちゃったんです。根底には、場所前にあった行司の待遇改善を求めたスト騒動の禍根があったんじゃないかとも言われています。

【9位】若ノ花×小錦/平成5年5月場所

 肉眼とビデオ、角度で見え方って違うんです。これは千秋楽の取組、若ノ花が土俵際で寄り倒されてしまうんです。「寄り倒しだな、小手投げまで行ってないな」と場内放送の席で私が助手に聞いたら、助手は「いや、若ノ花の体は残ってますよ」っていう。助手はNHKが正面から撮った映像を見てるんです。私は小錦の後ろから見てた。小錦が若ノ花に上から覆いかぶさってる感じです。

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