私の病院(帯津三敬病院)ではベストセラー『粗食のすすめ』の著者の幕内秀夫さんに食事指導をお願いしていたのですが、「粗食」の中心に据えているのがご飯です。まずご飯をしっかり食べなさいと主張されています。

 肉や乳製品を豊富に摂取する欧米型の食事ではなく、あくまで米が主食の伝統的な日本食が体にいいという考え方です。

 益軒はご飯をおいしく食べる方法についても語っています。「朝夕の食事をするごとに、最初の一椀は吸い物ばかりを食して、副食をとらないようにすると、ご飯の味がよくわかっておいしい」(巻第三の68)というのです。

 私は晩酌をするので、まず好きなおかずをつまみながら酒ですが、最後はご飯でしめます。一日一食はおいしいご飯を味わいたいのです。

 その点で私が幸せなのは、いつも晩酌をする病院の食堂で出されるご飯が半端なくおいしいのです。ご飯を箸ですくった時から、その違いがわかります。

 いつも私のご飯をつくってくれるAさんにその秘訣を聞くと、「先生が晩酌をご飯でしめる時間は7時50分前後と決まっているので、その時刻に一番おいしくなるようなタイミングで米を研ぎ始めるんです」とのこと。

 いやあ、さすがプロ。改めてお礼を言いたい。

週刊朝日  2018年1月5-12日合併号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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