【文豪の湯宿】風呂嫌いの芥川龍之介「水族館みたい」と喜んだ温泉とは? 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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【文豪の湯宿】風呂嫌いの芥川龍之介「水族館みたい」と喜んだ温泉とは?

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週刊朝日
「月の棟」10番での多忙ぶりは友人にも呆れられた

「月の棟」10番での多忙ぶりは友人にも呆れられた

源泉の温度を下げるために造った池を生かして、鯉が泳ぐ姿を鑑賞できる窓が造られた天平大浴堂

源泉の温度を下げるために造った池を生かして、鯉が泳ぐ姿を鑑賞できる窓が造られた天平大浴堂

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる連載「文豪の湯宿」。今回は「芥川龍之介」の「新井旅館」(静岡県・修善寺温泉)だ。

【芥川龍之介が「水族館みたい」と喩えた風呂はこちら】

*  *  *
 大正14年4月10日から約1カ月、新井旅館に滞在した芥川龍之介が、絵入りの手紙を妻に送っている。

〈おばさん、おばあさん、ちょいと二、三日お出でなさい。ここのお湯は(手描きのスケッチ)言う風になっていて水族館みたいだ。これだけでも一見の価値あり。〉(大正14年4月29日付、芥川文宛て書簡)

 芥川が「水族館みたい」と喩(たと)えた風呂は昭和9年に改築されたが、同じ景色が、今も天平大浴堂で体験できる。風呂場の下方の窓越しに池の中が覗ける造りになっており、人の気配を感じると鯉が窓辺まで寄ってくるのが見えるのだ。

 多忙のため体調不良に悩みながらも、「月の棟」10番や5番の部屋に籠もり執筆に明け暮れ、滞在中に短編「温泉だより」「新曲修善寺」などを書き上げている。

 実は芥川は、作家の中野重治が追悼文「ふるい人やさしい人」で「この人は湯になどはいらぬのか、じつにきたない手をしていた。顔なども洗わなかったのかもしれない」と書いたほどの風呂嫌いだった。その大作家さえも魅了した風呂はまさに、「一見の価値あり」だ。(文/本誌・鈴木裕也)

■新井旅館(あらいりょかん) 静岡県伊豆市修善寺970

週刊朝日 2017年12月22日号


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