「真面目に働いてワーカホリックになるような人ほど依存症になりやすい。企業人としてのアイデンティティーを失ったストレスから、65歳定年から1~2年後に入院する人が増えています。けれども結局、酒をやめられずに自殺、事故死する人が多い。吐しゃ物を喉に詰まらせての窒息死や、石油ストーブをつけっ放しにして一酸化炭素中毒死するケースも珍しくありません。この病気の怖さは酒をやめられなければ、死ぬまで飲み続けてしまうことです」

 アルコール依存症は短期間のうちになることもあるが、通常は男性の場合20年以上の飲酒習慣を続けていく中で酒量が増加し、顕在化する。

 外資系の企業に勤務していた浜野俊一さん(仮名・68歳)は、20代のころから接待での飲酒が日常化していた。夜ばかりではなく、昼間のランチ接待でも酒を飲む毎日だった。アルコール性肝炎で2度入院したが、仕事上、酒がやめられなかった。退職後もその習慣が抜けず、朝昼晩と公園に散歩に出掛けるたびに、コンビニでウイスキーの水割り缶を3本買った。飲酒によって慢性的に下痢気味だったが、それが悪化した。妻と大相撲観戦に出掛けた日に、急に腹部に激痛が走り、公衆の面前で失禁してしまう。浜野さんが振り返る。

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